EP6 Star Wars: Episode VI – Return of the Jedi

スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還

公開年
1983
監督
リチャード・マーカンド
製作国
アメリカ
上映時間
132分
1983年公開、リチャード・マーカンド監督。旧三部作の完結篇。ジャバ宮殿、エンドアの森、第二デス・スターの三戦線を並行編集で同時進行させるクロスカッティング構成と、クリーチャーパペット技術の集大成。

作品概要

『スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還』は、1983年5月25日に公開された旧三部作の完結篇である。製作・原案はジョージ・ルーカス、脚本はルーカスとローレンス・カスダン、監督はリチャード・マーカンドが務めた。当初『リベンジ・オブ・ザ・ジェダイ』として公開直前まで宣伝されていたが、「ジェダイは復讐しない」というルーカスの判断で『リターン・オブ・ザ・ジェダイ』に改題された経緯がある。

物語は、炭素冷凍されたハン・ソロをジャバ・ザ・ハットから救出する宮殿パート、ヨーダとの別れと父との対峙を描くダゴバ・パート、そしてエンドアの月での地上戦+第二デス・スター攻略戦の三層構成で進む。クライマックスはこの3つの戦線をクロスカッティングで束ね、シリーズの大団円を一気呵成に見せる構造になっている。

制作背景

ルーカスは前作に続き監督業を降り、製作と全体設計に注力した。前作までで20世紀フォックスとの関係や ディレクターズ・ギルド との労使問題を整理する必要があったこと、ルーカスフィルムの拡大に伴う経営判断もあり、現場演出は外部監督に委ねる方針が継続された。

候補にはスピルバーグやデヴィッド・リンチの名も挙がったが、ギルド非加盟の事情とスケジュールの関係でいずれも実現せず、英国の TVドラマ・小品映画出身で堅実な演出のマーカンドが起用された。マーカンドは大規模VFX製作の経験は浅く、ILMとの調整やセカンドユニットとの統合はルーカス自身が深く関与している。

撮影とロケ

エンドアの森のシーンは、北カリフォルニアのジャイアントセコイア林(クレセント・シティ近郊)で撮影された。スピーダーバイクが森林を疾走する印象的なシーケンスは、撮影監督のジャレッド・ハーディが ステディカム を担いで森の中を歩き、その映像をスローシャッターで取得して、後で速度を上げて再生することで時速200kmの疾走感を作り出した。バイク自体は俳優を乗せたパーシャル・モデルとブルースクリーン合成である。

ジャバ宮殿は英国エルストリー・スタジオに大型セットを構築。室内の重力感のある暗がりと、サラクの口がある砂漠(タトゥイーン)の外景(ユマ砂漠ロケ)を組み合わせ、第1作で確立したタトゥイーンの世界観を拡張した。

クリーチャー造形の集大成

本作はCGI以前の アニマトロニクス・クリーチャー 表現が頂点に達した作品である。

  • ジャバ・ザ・ハット: 全長約1トンのラテックス+ゴム+フォーム製の巨大パペット。8人以上のオペレーターが内部と外部から操作し、顔の表情、舌、しっぽ、腕を分担して動かした
  • サラク: ピット型のメカニカル・パペットで、口の収縮と触手の蠕動を機械で制御
  • イウォーク: 子役を含むスーツアクターが演じる毛皮造形クリーチャー。ファーキャラクターの「重さ」と「かわいさ」を両立させる演技と造形のバランスは、後の『グレムリン』『E.T.』周辺作品にも影響を与えた
  • アドミラル・アクバル/ニーン・ナン: フェイシャル・アニマトロニクスを用いた表情豊かな半身パペット。鰓・口・目の独立駆動が、CGI時代以前の手動コントロールの到達点を示す

これらのクリーチャー技術は、ジム・ヘンソンの『ダーククリスタル』『ラビリンス』と並ぶ、80年代パペットアートの金字塔である。

VFXとマット撮影

第二デス・スターの宇宙戦は、ILMが構築した約60隻分のミニチュア宇宙船と、モーションコントロール撮影による多重合成で実現された。攻撃ランナバウトやXウィングのドッグファイトのカット数は前2作を大きく上回り、ILMの合成ワークフローを限界まで酷使した結果、本作以降の同社は 合成ショット数管理 を厳密化し、後の『ジュラシック・パーク』へのCG移行を見据えた工程改革に着手した。

エンドア森林の追走シーンや皇帝の玉座の間の合成にも ブルースクリーン が大量に使われ、合成エッジの処理品質が前作よりさらに向上している。マットペインターのラルフ・マッカリーやマイケル・パングラジオによる絵画的な背景は、デジタル時代の到来後も「マットペイントとは何か」を語る際の基準点として参照される。

クロスカッティングと脚本構成

本作の演出上の最大の特徴は、終盤約40分にわたる クロスカッティング(並行編集) である。ハン・ソロ率いる地上部隊によるシールド発生装置攻略、ランド・カルリジアン率いる反乱軍艦隊の包囲戦、そして皇帝とダース・ベイダーを前にしたルークの内面の戦い——この3つの戦線を、観客に混乱を与えない頻度と長さで切り替え、最後のシールド破壊・デス・スター爆発・ベイダーの救済へと収斂させる。

クロスカッティング自体は D・W・グリフィス以来の古典的手法だが、本作は「複数の戦線が並行進行している大作のクライマックス」というSF・ファンタジー大作の シークエンス 構築のテンプレートを作った。『ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還』や『アベンジャーズ/エンドゲーム』の終盤構造は、本作のリズム設計を直接の参照点としている。

産業的レガシー

世界興収は約4億7,500万ドル(1983年公開時)。マーチャンダイジング収益はさらに巨大で、ケナー社のフィギュアシリーズはイウォーク・ジャバなどの新キャラクターで再加速した。ルーカスフィルムは本作までのシリーズ運営により、 二次利用権 ・ライセンス契約・自社配給という独立系プロダクションの理想型を確立。後の2012年ディズニーによるルーカスフィルム買収(約40.5億ドル)の評価額は、この資産構造の上に成立している。

旧三部作はここに完結し、ルーカスフィルムはILMやスカイウォーカー・サウンドといった子会社群を通じて、ハリウッド全体のVFX・サウンドポストプロダクションのインフラを担う存在へと進化していった。本作はその完成点であり、CG以前と以後を分かつ転換点でもある。

よくある質問

監督がジョージ・ルーカスではなくリチャード・マーカンドだったのはなぜですか? expand_more

ルーカスは『帝国の逆襲』に続いて本作でも製作・原案に専念しました。理由はディレクターズ・ギルドとの労使問題(前作のクレジット表記をめぐる対立で脱退状態にあった)と、シリーズ運営側に集中する経営判断です。スピルバーグなど大物にも打診しましたが、最終的に英国のテレビドラマ出身で堅実な演出に定評があったマーカンドが起用されました。

エンドアの森のシーンはどう撮影されたのですか? expand_more

外景はカリフォルニア州北部、レッドウッド国立公園のジャイアントセコイア林で撮影されました。スピーダーバイクの森林追走シーンは、ステディカムを背負って徒歩で森を歩き、1コマあたりの再生速度を上げる「アンダークランク」風の効果で猛スピードに見せる工夫が用いられました。背景プレートをライブで撮影し、バイクと俳優はブルースクリーンで合成しています。

イウォークやジャバ・ザ・ハットなどのクリーチャーはどう作られましたか? expand_more

本作はCG普及以前のアニマトロニクス・クリーチャーの集大成です。ジャバは複数オペレーターが操る巨大ラテックスパペットで、表情・腕・尻尾を分担して動かしました。イウォークはスーツアクター、サラクの口は機械仕掛けの開閉ギミックです。ジム・ヘンソン社の系譜にあるパペット技術が、SF大作のスケールで本格運用された記念碑的作品です。

クライマックスの三戦線を同時に見せる演出は何と呼ばれますか? expand_more

複数の場所で同時進行する事件を交互に短く切り替えて見せる編集手法を「クロスカッティング(並行編集)」と呼びます。本作ではエンドア地上戦・宇宙艦隊戦・皇帝とルークの対決という3つの戦線をテンポよく切り替え、観客に「すべてが連動して終局へ向かう」という感覚を与えます。古くはD・W・グリフィスが体系化した手法ですが、SF大作で観客の感情を盛り上げるテンプレートとして本作が再定着させました。

1997年特別篇と2004年DVD版での変更点は何ですか? expand_more

1997年の特別篇ではジャバ宮殿の歌手シーン(マックス・レボ・バンド)が大幅にCG拡張され、エンドアの祝祭シーンも他惑星を映す形に変更されました。2004年DVD化時にはラストの霊体アナキンが俳優ヘイデン・クリステンセンに差し替えられ、ファンの間で賛否が分かれました。完成済みフィルムを後年デジタルで改変することの是非を象徴する議論を生んだ事例です。

#三部作完結 #クロスカッティング #クリーチャー造形 #ハリウッド史