ポストプロダクション Full Package / Master

完パケ

かんぱけ

編集・MA・カラコレなどすべてのポストプロダクション工程を終え、放送・配信・上映にそのまま使える完成状態の映像素材のこと。

完パケとは

完パケ(かんぱけ)は「完全パッケージ」の略語で、映像作品がすべてのポストプロダクション工程を経て、放送・配信・上映にそのまま使用できる完成状態になったことを指す日本独自の業界用語である。編集、MA(マルチオーディオ=整音・音楽・効果音の最終ミキシング)、カラーグレーディング、テロップ挿入、そして最終的なフォーマット変換までを含むすべての工程が完了した状態が「完パケ」である。

英語では「Master」や「Final Deliverable」「Finished Program」などに相当するが、日本語の「完パケ」のように一語で完成状態を表す便利な業界用語は英語圏にはない。日本の映像業界に独特の文化が凝縮された言葉といえる。

完パケができるまでの工程

完パケに至るまでには複数のポストプロダクション工程がある。その主な流れは以下の通りである。

オフライン編集: 撮影素材を仮の画質で繋ぎ、物語の構成を組み立てる。監督やプロデューサーと何度も試写を重ね、カットの順番や長さを決定する。

オンライン編集: オフライン編集で決まった構成に基づき、高画質の素材で本編集を行う。VFX(視覚効果)の合成もこの段階で行われる。

カラーグレーディング: 映像全体の色味を統一し、作品の雰囲気に合わせた色彩設計を施す。シーンごとの明るさや色温度の差を整え、一貫したルックを作り上げる。

MA(Multi Audio): 台詞の整音、BGM・劇伴の挿入、効果音(SE)の追加、そして最終的な音声ミキシングを行う。5.1chサラウンドなどの音響フォーマットへの対応もここで処理される。

テロップ・字幕: テレビ番組ではテロップの挿入、映画では字幕の制作がこの段階で行われる。

フォーマット変換・納品: 放送局、配信プラットフォーム、映画館など、納品先の要求するフォーマットに変換して納品する。この納品物が「完パケ」である。

具体的な作品での使われ方

テレビドラマの完パケ納品

日本のテレビドラマ制作では、完パケの納品期限は放送日の数日前に設定されるのが通常だが、制作スケジュールが逼迫した場合、放送当日の朝に完パケが納品されるという事態も珍しくない。特に生放送に近いスケジュールで制作される連続ドラマでは「ギリギリ完パケ」が業界の日常となっている。

1990年代のフジテレビ月9ドラマの黄金期には、高い視聴率を維持するためにギリギリまで編集を続け、放送数時間前に完パケが届くことが常態化していた。この慣行は制作スタッフの過重労働問題とも密接に関連しており、近年は働き方改革の一環として完パケの早期納品を求める動きが広がっている。

映画の完パケとDCP

映画の場合、完パケはDCP(Digital Cinema Package)と呼ばれるデジタル上映用フォーマットで納品されることが一般的である。黒沢清監督の『CURE』(1997年)の時代にはフィルムプリントが完パケだったが、現在ではデジタル完パケが主流となった。DCPの作成にはフォーマット変換や暗号化など専門的な工程が必要で、ポストプロダクション・スタジオが担当する。

バラエティ番組の完パケと生放送の違い

バラエティ番組には「完パケ番組」と「生放送番組」がある。完パケ番組は事前に収録・編集・MAを済ませた状態で放送されるもので、テロップや効果音まですべて完成した状態で納品される。一方、生放送はリアルタイムで放送されるため完パケという概念がない。半生(はんなま)と呼ばれる、一部を事前収録の完パケVTRとして用意し、スタジオパートは生放送で進行する形式もある。

類似用語との違い・使い分け

完パケとオフライン編集の違い

オフライン編集は編集の途中段階であり、仮の映像で構成を検討するための作業物である。完パケはすべての工程が完了した最終成果物であり、両者は制作プロセスの異なる段階を指す。

完パケと白完(しろかん)の違い

「白完」は、テロップやスーパーを入れる前の段階の完成映像を指す。映像と音声の編集は完了しているが、テロップ作業が残っている状態である。テレビ番組制作では「白完チェック」という段階があり、テロップを入れる前にディレクターやプロデューサーが内容を確認する。白完にテロップを加えたものが完パケとなる。

完パケとプレビュー版の違い

プレビュー版(試写版)は、関係者に内容を確認してもらうための暫定的な完成版であり、フィードバックに基づいて修正が入る可能性がある。完パケは修正の余地がない最終納品物である。

現場での使われ方・ニュアンス

「完パケいつ?」は日本の映像制作現場で最も頻繁に聞かれる質問の一つである。プロデューサーや制作進行が納品スケジュールを管理する際に使い、「完パケ日」は制作スケジュール全体の基準点となる。

「完パケ上がり」はすべての作業が終了した瞬間を指し、制作チームにとっては大きな達成感を伴う瞬間である。長期間にわたる制作の最終ゴールが「完パケ」であり、この言葉には単なる技術用語を超えた、制作者の感慨が込められることも多い。

近年では、配信プラットフォーム向けの納品が増え、完パケのフォーマット要件が多様化している。Netflix、Amazon Prime Video、Disney+など、各プラットフォームが異なる技術仕様を求めるため、同じ作品でも複数の完パケを作成する必要がある場合もある。

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