ビジネス・契約 Residuals

レジデュアル

れじでゅある

映画やテレビ番組が再放送・配信・パッケージ販売などで二次利用されるたびに、俳優・脚本家・監督などに支払われる継続的な報酬。2023年のハリウッドストライキの中心的争点となった。

レジデュアルとは

レジデュアル(Residuals)は、映画やテレビ番組が初回放送・公開以降に再利用(再放送、配信、DVD販売、海外販売など)されるたびに、出演者・脚本家・監督などのクリエイターに支払われる継続的な報酬のことである。日本語では「再使用料」や「二次利用料」と訳されることもある。

アメリカの映像業界において、レジデュアルはクリエイターの生活を支える重要な収入源であり、WGA(全米脚本家組合)、SAG-AFTRA(全米映画俳優組合)、DGA(全米監督組合)が団体交渉を通じて獲得・維持してきた権利である。

レジデュアルの歴史

テレビ再放送からの始まり

レジデュアル制度は1950年代のテレビ普及期に始まった。当時、テレビ局が番組を再放送して追加収入を得る一方、出演者には追加報酬が支払われないことが問題となり、俳優組合の交渉によって再放送時の報酬制度が確立された。

ビデオ時代の拡大

1980年代のVHS・ベータマックスの普及により、映画やテレビ番組のパッケージ販売が新たな収入源となった。この際のレジデュアル料率の交渉は難航し、1988年のWGAストライキ(22週間)の一因ともなった。最終的に合意されたビデオのレジデュアル料率は売上の約1.5%と低く、この「悪い先例」がのちの配信時代にも影響を及ぼすことになる。

配信時代の問題

従来モデルとの乖離

地上波テレビの時代、レジデュアルは再放送の回数に応じて支払われ、人気番組に出演した俳優は長年にわたって安定した収入を得られた。例えば『フレンズ』の主演6人はそれぞれ毎年約2000万ドルのレジデュアルを受け取っているとされる。

しかし、Netflix、Amazon Prime Video、Disney+などの配信プラットフォームでは、「再放送」という概念がない。作品はカタログに追加され、いつでも視聴可能な状態に置かれるが、視聴回数に応じたレジデュアルは支払われないか、極めて低額にとどまっていた。

「配信レジデュアル」の低さ

配信プラットフォームでのレジデュアルは、従来の地上波再放送と比較して桁違いに低いことが問題視されてきた。ある脚本家はSNSで「全世界で配信されている番組のレジデュアルが1回あたり数ドルだった」と告発し、大きな反響を呼んだ。

配信プラットフォームが視聴データを公開しないことも問題を複雑にしている。クリエイター側はそもそも自分の作品がどれだけ視聴されているかを知ることができず、公正なレジデュアルの算定が困難な状況にあった。

2023年ハリウッドストライキ

WGAストライキ(148日間)

2023年5月、WGA(全米脚本家組合)はストライキに突入した。主要な要求の一つが、配信時代に即したレジデュアル制度の改革だった。具体的には、作品の視聴実績に連動したレジデュアルの導入と、配信プラットフォームによる視聴データの開示が求められた。

SAG-AFTRAストライキ(118日間)

同年7月にはSAG-AFTRA(全米映画俳優組合)もストライキに加わった。俳優にとってもレジデュアルは死活問題であり、特にキャリアの初期・中期の俳優にとっては、出演作のレジデュアルが次の仕事を見つけるまでの生活費を賄う重要な収入源だった。

合意の結果

約5ヶ月にわたるストライキの結果、配信プラットフォームのレジデュアル引き上げ、視聴実績に基づくボーナス制度の新設、AIの使用に関する規制などを含む新たな労働協約が締結された。

日本の映像業界との比較

日本の映像業界には、アメリカのレジデュアルに相当する体系的な制度は確立されていない。

日本のテレビドラマの場合、俳優のギャラは出演時の一括払いが基本で、再放送時に追加報酬が支払われることは少ない。DVD・Blu-rayの販売や配信に関しても、出演者への二次利用料は契約に明記されていないか、極めて低額であるケースが多い。

日本俳優連合(日俳連)はテレビ出演の再使用料について交渉を行っているが、アメリカの組合ほどの交渉力を持っておらず、業界全体の構造改革には至っていない。この違いは、アメリカの映像業界における労働組合の歴史的な影響力の大きさを反映している。

なぜレジデュアルは重要なのか

レジデュアルは単なる「追加報酬」ではない。映像制作は「プロジェクト型」の仕事であり、一つの作品が終われば次の仕事があるかどうかは不確定である。レジデュアルは、プロジェクト間の「空白期間」にクリエイターの生活を支えるセーフティネットとして機能している。

また、レジデュアルは作品の長期的な価値に対する公正な分配という原則に基づいている。スタジオが作品の二次利用から継続的に収益を得ている以上、その作品を作ったクリエイターにも継続的な報酬が支払われるべきだという考え方は、映像産業のエコシステムの根幹をなしている。

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